山葡萄のポリフェノール

大地の歴史と、まもり育まれた山葡萄DNAのテロワール

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歴史

日本ヤマブドウ(Vitis coignetiae)は、ブドウ科の東アジア種に分類さ れ、日本にのみ生息する固有の果実です。1万年以上前の縄文時代の遺跡から発掘され、また古事記や日本書紀にも記載されて、食用だけでなく薬としても用いられていました。

岩手県の土質は日本でも最古といわれ、特に東側の地域はミネラル成分も豊富で山葡萄の生育に適していると言われています。

かつて豊産なヤマブドウ(以下山葡萄と記す)を掘り取って自宅圃場に定植し、さらに選抜して優秀な山葡萄の生産を行ってきました。商品化され人気が高まると、県内での生産も増加してきました。

山採り由来の系統

  • 発見地域の名前:葛巻系、田野畑在来系など
  • 人、会社の名前:佐幸系、山下系など
  • 岩手県林業技術センターの品種登録:涼実紫系

その後、収量を上げるための交配種が育成され生産が奨励されました。

日本ヤマブドウとジュースやワイン用の西洋種とのF1雑種以外に、朝鮮ヤマブドウ(v.アムレンシス)、エビズル(v.ツンベルギー)サンカクズル(v.フレックスオーサー)などとの交配種もあり、単に「ヤマブドウ」と呼ばれていても、本来の岩手の山に自生していた山葡萄とは異なるものも多く存在します。残念ながら商品表示だけでは本来の山葡萄との区別ができないものも多くみられます。

参考

現在、日本で食べられる一般の葡萄は、一般的なブドウ、主にヨーロッパで栽培されているヴィティス・ビニフェラ(Vitis vinifera)やアメリカで栽培されているヴィティス・ラブラスカ(Vitis labraska)等と異なり、西欧を起源としているもので、甲州種などの一部を除き、殆どが明治の開拓使時代に海外から移入されたものです。

生産量

全国の主な産地と栽培状況(特産果樹生産動向調査H24)

栽培面積(ha) 収穫量(t)
北海道 6.7 34.7
青森県 13.2 9.8
岩手県 106.7 234.5
山形県 34.8 86.3

ヤマブドウの味わい

ヤマブドウジュース平均の味わいを普通の100%ブドウジュースと比較しました。
広い味わいのエリアが山葡萄ジュースの濃厚で滋味深い風味を表しています。

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栄養・機能性

山葡萄は一般のブドウと比較して栄養価・機能性成分ともに豊富な食材です。

岩手県久慈市平成17年~19年の分析値

山葡萄の栄養価 VS 普通ブドウ

ポリフェノール量   8倍
Vit.C          4倍
Vit.E          10倍
鉄            3倍

生産地、山採り選抜山葡萄か、あるいは交配種かによって成分は異なります。
一般に山採り選抜山葡萄は交配種より成分含量が多く、味わいにも反映されます。

好みは様々、その土地に思いを馳せながらじっくり味わってみたいですね。

山葡萄のポリフェノール。

ポリフェノールは山葡萄の色、味に影響し、また健康の維持・増進に役立つ機能性成分でもあります。

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食と健康の情報では様々な呼び名のポリフェノールが飛び交っています。山葡萄に関するものでは、プロアントシアニジン、レスベラトロール、アントシアニン、タンニン、フラバノール(カテキン)などが話題になります。
タンニンは特定の性質(なめし皮の製造などで活用)を示す植物化合物の総称です。いくつかのポリフェノールがタンニンの範疇にありますが、タンニンの作用が、味覚として渋さをひきおこすために、「タンニン」表記は食品業界で頻用されています。赤ワインに関していえば、醸造の過程でこれらのポリフェノールの変化が起こり、風味に影響をあたえます。低分子化して渋みが抜けたり、一方で苦みとなるもの、ほかの成分と反応して「おり」となるものなど様々です。

アントシアニンは果実の色素(紫色)を反映していて、果実の成熟とともに含量を増します。プロアントシアニジンは果皮と種子に含まれていて葡萄の着色が開始になるあたりから増加し、完熟してくると減少してきます。プロアントシアニジンはタンニンですから未熟果実や種は渋みを感じます。

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高分子のポリフェノール類はそのままだと吸収されにくいと言われています。

山葡萄種子に豊富なプロアントシアニジンは分子量が小さく吸収されやすく、さらに醸造や工業的な操作によりプロアントシアニジンはより吸収利用されやすい低重合プロアントシアニジンに変化します。

植物にはフラボノイド類は配糖体(ブドウはマルビン)として存在しています。配糖体から糖が分離されたものが総称アグリコンであり、アントシアニンはアグリコン、アントシアニジンはフラボノイド骨格の名称です。アントシアニンの生理機能には親化合物とその化学的な分解物、さらに腸内細菌により生成する代謝物が関与していると考えられていますが、体内動態は未解明です。

ポリフェノールの機能性研究は日々進んでいます。単一成分の動物実験、あるいは赤ワインの疫学調査(ヒト)による検証では、どの成分がどのように作用しているかは完全に解明されていません。

  • プロアントシアニジン:抗酸化作用、ACE阻害、抗糖化作用、抗アレルギー作用など
  • アントシアニン:抗酸化作用、眼疾病予防、メタボリック症候群予防など
  • レスベラトロール:動物実験レベルでの寿命延長作用
  • 赤ワイン(疫学調査):動脈硬化予防、アルツハイマー予防、など。

ワイン、ブドウ、山葡萄に限らず、多くの植物にポリフェノールは含まれていますから、野菜・果物を毎日コツコツ体内に取り入れる健康法を実践していきましょう。

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