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健康情報

認知症と食からの予防

「認知症」とは老いにともなう病気の一つです。アルツハイマー病や脳血管障害により脳の細胞が死ぬ、または働きが悪くなることによって、記憶・判断力の障害などが起こり、社会生活や対人関係に支障が出ている状態が持続する場合をいいます。

アルツハイマー病は脳神経細胞や脳血管壁にアミロイドβ―蛋白が沈着することにより、脳神経細胞死や機能障害が起こるとされています。ただしアミロイドβ―蛋白の沈着の量と認知症の重症度は必ずしも相関はないようです。脳を守る生活習慣(食事・運動・生きがいをもつ)を実践することが今のところ最も確実な予防法です。

食からの予防については伝統的地中海食にアルツハイマー病の予防効果が認められています。新鮮な野菜果物、豆類、魚類、オリーブオイル、赤ワインなどが具体的な食材です。抗酸化(レシピ夏号)、抗糖化(秋号)、脂質バランス(冬号裏面)においても、すぐれた食事スタイルです。特に魚に多く含まれているω-3脂肪酸(DHA,EPA)はアミロイドβ-タンパクの凝集抑制、脳微小循環の改善、脳神経細胞の膜安定化など、アルツハイマー病ほか精神・神経疾患の予防に役立つことが確認されています。日本の野菜は生産方法や品種改良により近年、栄養価の低下が言われています。旬の食材や味や香りの強い野菜(薬味・ハーブ、在来作物など)を毎日の食卓に取り入れて補いたいものです。また赤ワインポリフェノール、お茶のカテキンやクルクミンにも予防効果を示す研究結果が多数存在しています。

脂質バランス

脂肪は1gあたり9Kcal で効率の良いエネルギー源ですが、構成単位である脂肪酸の摂取バランスによって身体への影響も異なります。脂肪酸には飽和脂肪酸、一価不飽和脂肪酸、多価不飽和脂肪酸(ω-3 脂肪酸/ ω-6脂肪酸)などがあり、食材によって含まれる脂肪酸の量や質に差があります。

  1. アンチエイジングやアルツハイマー病予防に魚食からのω-3摂取が推奨されています。魚の種類によってω-3の量も大きく異なりますが、サバ、サンマ、アジ、イワシなどの青身魚を1日1回(ω-3のEPA/DHA 1g-2g)いただく事で充足できます。エゴマ油やアマニ油に豊富なω-3(α-リノレン酸)は、一部がEPA/DHAに代謝変換されます。
  2. 脂質代謝を良好に保つためには脂質バランスが重要です。飽和脂肪酸(肉・バターに多い):一価不飽和脂肪酸(オリーブ油など):多価不飽和脂肪酸(魚類、植物性油など)を3:4:3の比率で摂取する必要があります。
  3. 気管支喘息、アトピー、炎症性腸疾患などの慢性炎症性疾患、ほか老化も炎症のプロセスと言われており、これらの食事療法は脂質バランスを改善することが重要なポイントとなります。 ω-3とω-6は代謝酵素が共通しており、ω-6(サラダ油などに多い)の過多摂取により、ω-3 / ω-6のバランスがくずれると、炎症促進物質が産生されやすくなります。

 

骨と筋肉を食からメンテナンス

何歳になっても、自分の足で行きたい場所に自由に移動できること、それは全ての方の願いだと思います。骨、関節、筋肉、神経系、それぞれが健康を維持できるためにも毎日の食事と運動が大事です。

骨と筋肉を食からメンテナンス

支えるための骨
骨の健康での目標は骨折予防ですが、そのためには骨強度の維持が重要です。
骨強度=骨密度X骨質
骨を鉄筋コンクリートに例えると、コンクリートが骨密度、鉄筋が骨質と考えると理解しやすいと思います。骨密度の急激な低下を予防するために必要な栄養素はカルシウム、ビタミンD, ビタミンKなどです。女性ホルモンの減少とともに骨密度も低下する傾向にありますから、健診などで骨密度を定期的に測定し、骨粗鬆症の治療開始時期を逃さないようにしましょう。また、骨質の保持は鉄筋であるコラーゲンの劣化を防ぐことが具体的な方法です。このためには抗酸化(レシピ夏号参照)、抗糖化(パンフレット背面参照)、ホモシステイン代謝が重要です。ホモシステイン代謝を良くするためには葉酸、ビタミンB6,12が重要です。

動かすための筋肉
筋肉量維持のためには運動が最も大事です。筋肉は使用しなければ委縮し筋力低下や運動機能低下に繋がり、転倒や骨折のリスクも高まります。また筋肉は糖代謝にも関わりがありますから生活習慣の治療・予防にも筋量の維持は課題です。高齢になるとさっぱりした食事を好むようになったり、また消化吸収能力が低下しますので、低栄養になる心配があります。良質な必須アミノ酸が豊富な赤身肉などの動物性食品も食べるようにしたいですね。
骨関節の健康は生活の質をより良いものにしてくれます。介護予防においても重要な項目のひとつです。

健康情報 夏

夏は気温、湿度、気圧や紫外線などの環境ストレスに加え、疲労や、加齢に伴う身体能力低下から、熱中症、不眠、倦怠感、胃腸のトラブルを起こしやすくなる時期です。この時期好まれる麺類やアイスクリームなど、糖質に偏った食事は、倦怠感、抑うつ、冷房による冷えを増強します。また、スタミナ食として、こってりとした食を好む男性も多いようですが、カロリー、脂質、糖質の過剰は、代謝ではむしろストレスとなります。さらに夏の強い紫外線は、肌の色素沈着のほかに活性酸素のダメージもひきおこします。食からの体調メンテナンスのために、ビタミン、ミネラル、抗酸化物質をとりましょう。抗酸化物質は体内での酸素を利用した代謝過程で発生する物質で、自身の細胞や遺伝子にダメージをあたえ、これが生活習慣病、がん、自己免疫疾患、老化などのひきがねになると言われています。本来、余剰分の活性酸素を消去する仕組み(抗酸化能)が体内に整っていますが、加齢によりその能力が低下したり、活性酸素が生じやすくなる環境(環境汚染、ストレス、煙草、飲酒、紫外線、放射能汚染など)により、現代は活性酸素によるストレスを受けやすい状況と言われています。

抗酸化物質が豊富な食事を毎日コツコツ摂取することで、抗酸化能を高めることが可能になります。野菜の色、香り、味、風味などの成分が植物化合物(フィトケミカル)と呼びますが、これが抗酸化物質として機能します。成分表には記載されていませんが、旬の美味しい野菜に豊富に含まれていて、疾病予防やアンチエイジングに大きな期待がよせられ、現在、多方面で研究がすすめられています